魔法にかけられて
※この記事は2016年2月20日に書いたものです。
リア充。
お金も時間も余裕があった。友達もいた。彼氏もいた。勉強もそこそこできた。それが2013年11月までの私だ。しかしある日から、私のステータスの中に「ジャニヲタ」が加わることになる。
ある1人の友人のおかげで、私は自担と出会い、ジャニヲタとなった。彼女の圧倒的な洗脳能力は後に「魔力」と呼ばれることになる。なのでここでは彼女のことを「魔王」と呼ぶことにしよう。あくまでも魔女ではなく、「魔王」だ。
魔王は高校時代の友人である。高3の時に席が前後になったことをきっかけに本格的に仲良くなった。彼女は元々アラシックで、ジャニヲタだった。私が高3の夏に、花より男子の再放送を観て松本潤さんがタイプだと言ったらソロ曲の”Shake It!”を紹介され、”美世界魂”のライブDVDを貸され、そこから嵐に少しハマったこともあった。だが、受験勉強の合間にライブDVDを観る程度だった。(だいぶ勉強に支障をきたしたが)
元々学校外で頻繁に遊ぶ仲ではなかったので、卒業して別々の大学に進んで、もう同窓会くらいでしか魔王と交わることはないと思っていた。
大学二年の秋、2013年10月、高3の時のクラスのグループLINEが突然活発に動き出した。犯人は魔王だった。どうやら同年の夏にやっていたドラマ”ぴんとこな”をきっかけにKis-My-Ft2の玉森くんにどっぷりハマってしまったらしいのだ。魔王はグループLINEで散々玉森くんの魅力を語ってきた。彼女は何をしてもみんなから愛される”末っ子キャラ”だった。みんなにツッコまれながらも一生懸命玉森くん、そしてKis-My-Ft2の魅力を伝えてきた。
しかしさすがに30人近くが参加するグループLINEで、こんなに玉森テロを起こしたら迷惑になる人がいるだろうということになり、別のグループLINEへ移動することになった。そこには15人ほどメンバーがいた。クラスLINEでの発言率が比較的高めなメンバーが集められているグループだった。その15人ほどのメンバーは、高校時代、同じ”派閥”に属していたメンバーばかりではなかった。もちろん仲が悪かった訳でもないが。
そこに魔王はフィールドを移し、私達に散々Kis-My-Ft2を紹介してきた。メンバー1人1人の写真と名前や、キスマイBUSAIKU!?の動画のURLをご丁寧にグループのノートにまとめてくれたりした。みんなは「ふぅん、魔王めっちゃハマってるね、やばいね」という調子で反応していた。
ある日、「騙されたと思ってこの動画観て」と、ひとつのURLがLINEに送られてきた。私の人生を変える動画だった。
舞祭組が「棚からぼたもち」を歌って踊っている動画だった。
騙されたと思って観てみたら、すっかり中毒になってしまった。
ジャニーズとは思えぬ自虐的な歌詞、奇抜なメロディー、ガムシャラに歌って踊る四人。彼らはこの曲で這い上がろうとしている。必死に自分たちの存在を訴えかけている。
何度もその動画を観た。何度も、何度も。
そして私はその4人の中に1人、とんでもなく自分のタイプの顔がいることに気付いた。それが千賀健永だった。
魔王に「私千賀くんが一番かっこいいと思う」と伝えた。すると魔王は「じゃあ千賀担だね」と冗談交じりに言ってきた。
千賀担………。私は彼の担当。
冗談と分かっていながらも、そう思うとますます目が離せなくなった。
今度はキスマイBUSAIKU!?を手当たり次第見始めた。ジャニーズとは思えない企画が凄く新鮮だったし、メンバーの顔と名前と大体のキャラクターを覚えるのに最適な番組だった。何よりキュンキュンした。爆笑した。私はこうしてキスマイに夢中になっていった。
同時に、そのLINEのグループのメンバーも多数、キスマイに堕ちていった。魔王の「誰が一番かっこいいと思う?」という質問に各々が答えると、「じゃあ○○は○○担」という風に勝手に担当にされた。もちろん半分冗談で言っているのだが、一回言われるとそれから意識してしまうものなのだ。
しかも、奇跡的にみんなの担当がかぶることはほとんどなかった。北山担、千賀担、宮田担、横尾担(なぜか横尾担だけ4人くらいいた)、二階堂担、藤ヶ谷担、そして魔王が玉森担、という風にキスマイ全員に担当がついた。みんなそれぞれの形でキスマイに堕ちていった。
北山担は、「北山くんが一番タイプ」と言ったところ魔王に「じゃあ北山担ね」と言われ、軽い気持ちで北山担を名乗るようになった。今では私たちの中で一番意識の高いキス担だ。
宮田担は、元々どちらかといえばアンチジャニーズの部類だった。だが宮田くんの”ラブホ写真流出事件”を知って以来、宮田くんの人柄に惚れ込み、盲目のゾッコン系宮田担になった。
横尾担はたくさんいた。なぜか。何をしでかすか分からなくて目が離せないところが魅力らしい。
藤ヶ谷担は、約束魂の鑑賞会をしたときに藤ヶ谷さんの歌声とパフォーマンスに目が離せなくなったらしく、「私藤ヶ谷かも!!!!!」と言ってきたのが印象的だった。現在ヒョウ柄ピンクのスマホカバーを愛用中。
二階堂担は、”絶対にジャニーズになんて堕ちないだろう”と誰もが思うような子だった。彼女は1Dやレディガガのファンで、”The American Girl”という感じの子なのだ。LINEでもずっと目立った発言はなく魔王と「あの子LINE迷惑がってないのかなあ…」と心配していた。そんな彼女が突然「私もキスマイにハマってる」と申告してきた。その日は今でも私たちの中に語り継がれる衝撃の日となった。
やがてLINEのグループ名は「魔界」と名付けられた。その中では魔王の魔力が存分に発揮され、キスマイに堕ちていった人々は「ガチ勢」と呼ばれるようになった。だが、まだその頃の私たちはキスマイBUSAIKU!?のバックナンバーを見漁る程度で、ジャニヲタになんかなるまい。とまだ思っていた。そこで留まっておけばよかったのに…。
私はキスマイのアルバムをTSUTAYAで借り、毎日聴きながら通学した。
11月某日、魔王と宮田担と3人でカラオケに行くことになった。キスマイを好きになってからはLINEでしかやりとりをしていなかったので、会うのは初めてだった。
カラオケで、魔王と覚えたてのキスマイの曲を歌いまくった。宮田担はまだ曲はあまり聴いていなかったので、私があまりにキスマイの曲を歌えていることに軽く引いていた。魔王も驚いていた。
帰り道、CDショップに寄った。魔王の向かう先はもちろんジャニーズコーナー。そこで魔王は言った。
「スノドのCD買いなよ」
魔法の言葉だった。
私はCDなんて滅多に買わない人だった。CDなんてTSUTAYAで借りればいい。ウォークマンに入れて聴くだけだし。そう思っていた。
「SNOW DOMEの約束」。良い曲だ。当時の私はことあるごとに「ふぉえーばー!!!!」と叫んでいた。通常盤は1000円。CDってこんなに安かったっけ。しかも、カップリングの「モテたいぜトゥナイト」、どんな曲なんだろう。
気がつくとレジにCDを運んでいた。
魔王はひどく喜んでいた。宮田担はちょっと引いてた。私は満足していた。
それがKis-My-Ft2への初めての”課金”だった。
そこからジャニヲタ人生は始まった。
約束魂のDVDの発売が決まると、すぐに予約した。
キスマイBUSAIKU!?は毎週欠かさず、ガチ勢で実況しながらリアタイした。
キスマイの曲の音源も揃えた。
ガチ勢でカラオケに頻繁に通うようになった。
毎日LINEでキスマイについて語り合った。
みんなで妄想をしたり、好きな曲の良さを語った。
キスマイ7人、すべてのメンバーに担当が配分されていたので、メンバー全員の魅力を知ることができた。
セブンイレブンのキスマイくじは誰の景品が当たっても譲り先がいた。
7人分のタペストリーが揃った。
魔界の中に1人、えび担の子がいた。彼女はベテランジャニヲタ。私たちにたくさんの知識を提供してくれた。私たちは彼女を「監督」と呼んだ。彼女の存在に助けられ、私たちは立派にジャニヲタになることができた。
毎日が楽しかった。キスマイを好きになったことで、高校時代の友人と頻繁に会うようになったのが嬉しかった。高校時代は仲良くしていなかったような子もガチ勢の中にいた(というより殆どが遊んだことのないような子たちだった)ので、その子たちと同じ話題を共有できるのが新鮮で、楽しくて嬉しくて仕方なかった。キスマイが好きなのではなく、キスマイを応援することでできた仲間たちと過ごす時間が好きだった。
SNS上で集まった各担当の友達とかじゃなく、リア友で各担当が揃っていることが何よりの誇りだった。
ガチ勢が全員揃ってカラオケに行くと、Kis-My-Calling!やKis-My-LANDといった楽曲を自担のパートで歌い、全員の担当がいる喜びを感じられた。
数人はやがてSexy Zoneにハマりだした。UTAGE!にゲストで出たのがキッカケだった。キスマイよりもセクゾの方に熱を上げてしまった子もいた。
ひとつ言っておくが、魔王と監督以外は全員、高校時代はジャニヲタではなかった。ジャニヲタなんて二度と通らない道だと思っていた。正直ハマる奴なんてバカだと思っていた。
だが違った。ジャニーズは素晴らしかった。
素晴らしきジャニーズエンターテイメントに私たちは魅力された。
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ジャニヲタになってから1年半が経った。
私たちの大半は立派なDDになった。
私は昨年彼氏と別れ、いつの間にかNEWSとキスマイを掛け持ちするようになった。
別れた理由にジャニーズは直接関係はしていないが、ジャニヲタになっていなければ別れていなかったかも、と思ってしまうのも否定はできない。彼といる時より、ガチ勢といるときの楽しさの方が圧倒的に勝ってしまっていたのだ。
1年半で少しずつFORMを変えながらも、私たちはジャニヲタの道を突き進み続けている。
金欠と戦いながら。
この夏、我らが二階堂担が2年間の留学に旅立つ。
2年後もきっと変わらずみんなでジャニヲタしていることを祈り、二階堂担のポストはしっかり残しておいてあげようと思う。
魔法にかけられて、私たちはジャニヲタになった。
私たちは口々に言う。
「魔王の魔力とカリスマ性はすごい。」
「彼女はジャニーズ事務所から讃えられるべき」
「魔王のおかげで人生楽しくなった」
「魔王のおかげでお金がなくなった」
魔王よ、ありがとう。